平成の世になって早や三十年。来年の五月にはどんな年号になっているのでしょうか。さすがに明治生まれの人はいないと思いますが、昭和一桁生まれの人が九十歳前後となり戦時中の悲惨な体験をされた方が少なくなり、語り続けていくことが難しくなってまいりました。
四十五年前、初めて韓国に旅した時、まだ、戒厳令が敷かれていて、夜十二時になると装甲車が街を走り回り、戦争はまだ終わっていないのだということを知らされました。青瓦台の前の道路は戦闘機が飛べるように真っすぐに舗装され、週に一度は、雑穀の日があり、その日は米の代わりに、粟、稗(ひえ)やコーリャンなどを食べていました。
一九八一年に戒厳令は解かれていますが、北朝鮮とは休戦状態が続いています。今でも徴兵制度があり、約二年の兵役義務があり、除隊後でも八年間は年に数回、会社を休んでも訓練を受けなければなりません。ソウルの民間防衛シェルターは千万人の市民すべて収容することができる規模で、地下鉄と兼用されており、普通の生活ができるようになっています。平壌の地下鉄はもっとすごくて、地下百メートルのところを走っているそうです。日本人の平和に対する感覚と大きな差があります。
国、民族間の総合理解がなくては、決してこの平和な時代を維持することはできません。
世界ではいろんな地域で紛争が絶えず起こっています。当事者同士、自分たちは決して間違っていない、自分たちが正しいと思っています。そのことを主張する限り永遠に紛争は解決しません。
この負のスパイラルから逃れることはできるのでしょうか。良寛さんのように一切自己主張せず、欲を持たず、あるがままを受け入れて生きることは、よほどの覚悟を持たなければ出来ません。
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